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2006年06月08日
美しく賢いマネージャー、マリさん
5月30日(火)
この日、私は高齢者特別住宅のマネージャー、マリ・ペトコブスキさん(写真)にお会いしました。
前回までの2回インタビューの内容確認です。大変忙しい方ですが、時間を空けてくださいました。
マリさんは樋口恵子さんがいらっした時にも案内をしています。エスロブ市には市営の高齢者の「 Särskilt boende」、
訳して介護つき特別住宅が6つあります。これまでサービスハウスと書きましたが、これからはこの呼称にします。マリさんは、
その中の一つトルホゴーデンの責任者。1967年生まれで今年38歳になります。
ストックホルムのカロリンスカ医科大学で看護師の勉強をした秀才。カロリンスカ大学はノーベル医学生理学賞を決める大学でもあります。
「私はオンコロジーナースとして、これまで、たくさんパリアティブケア(癌の終末期のターミナルケア)の講義をしてきましたが、
今は夫の仕事の関係でエスロブ市に住んでいます。私のキャリアを知った市からすぐに話があり、この仕事につくようになりました」。
彼女には11歳と9歳と、もうすぐ3歳になるお嬢さんがいます。苗字が珍しいのはご主人のご両親がユーゴースラビア出身だからです。
インタビューをする時、いつもご本人のことも聞くようにしていますが、学歴や職歴を話しても、
個人的なことを話さない方が多いなかで、マリさんは、去年、気軽にプライベートなことも話してくれました。そして、「ルミ、
わからないことがあれば、何度でも聞いていいのよ。いつでも見学していいのよ」と言ってくれました。感激でした。
詳しい経営の数字も教えてもらえました。ざっと、お話しすると、実質、1人の入居者にかかる経費は1ヵ月で38,8万円。この70%
が人件費、19,6%が家賃です。入居者も家賃と食事代、介護費用を毎月支払います。その金額は年収により、限りなくゼロに近い人もいます。
すべては自治体に入る税金でまかなわれていて、何度もマリさんは「税金を使うのだから、最大の効果を出す経営が課題だ」と話しました。
前にも書きましたが、トルホはトロールで森に住むいたずらな妖精。ホは湖、 ガーデンは野原という意味で、この「トロール ホ ガーデン」はトロールの湖の野原という意味です。 エスロブ市は美観地区を高齢者と向かいにある中学校に使ってもらっています。トイレとダイニングキッチンのワンルーム(11坪が平均の広さ) のマンションが70あります。廊下や一階にあるホールやレストランには、亡くなった入居者の遺贈の家具や絵やタピストリーが飾られ、 カーテンや壁の色や素材、採光で自宅の雰囲気を演出するようにしています。
この特別住宅は終の棲家です。つまり、入居者の方々は認知症になっても、 終末期になっても最期までここに続けます。24時間のパリアティブケア(終末期ケア)を受け、亡くなっています。 マリさんは終末期ケアの哲学で、介護者教育を行いながら、経営の腕もふるっています。今、日本では医療改革で、療養型病棟に「住む」 高齢者が行き場を失おうとしています。また、医療保険で経営される老健や老人施設には3ヶ月しか「住む」ことができず、 次の住処を探してくれと家族は言い渡されます。厚生労働白書に連なる言葉はスウェーデンからヒントを得たと思われるものが多いのに、 この現実はなんでしょう。
投稿者 :rumi | 2006年06月08日 07:19